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第62話 ギルミット一族の悲劇

Auteur: 月歌
last update Date de publication: 2026-06-01 19:13:50

牢獄塔は、主に王国に反逆した政治犯が投獄されているらしい。強盗や殺人などの一般犯罪を犯した者は、別の牢獄所に収監されるのだと、蓮が教えてくれた。

彼は智也の知らないことをよく知っていた。王宮の図書院に連日通い、この国の歴史や常識を勉強しているらしい。勉強嫌いの智也には、毎日図書館に通うなど考えられないことだった。想像しただけで眩暈がする。

「蓮って元の世界にいた時から、知識欲が強かったよね。分からないことはとことん調べるタイプだったけど、異世界に来てからますますその傾向が強くなったみたいだね。感心するよ。私には到底できないな。」

「智也は勉強しなさすぎなんだよ。異世界で生き残りたいと思ったら、まずはこの世界のことをよく知ることが肝心だろ。文字や言葉、生活習慣は魔法で他人の脳をスキャンすれば大体の知識は得られるが、人によって結構まちまちでさ。それで王宮の図書院に通い始めたんだけど、これが意外と面白い。王宮の蔵書は偏見の塊だけどな。」

「偏見の塊?」

智也が聞き返すと、蓮は薄く笑って続けた。

「特に歴史書は最悪だな。どの国も大概そうだろ? 自国に都合の悪い歴史は捻じ曲げられる。王国の成り
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    「それは違う。」蓮は静かに切り出した。「おそらくカインの母親は、貴族の誰かと関係を持って男の子を産んだのだろう。ただしその貴族には僅かだが王家の血が流れていた。推測になるけど、カインの父親は、何代か前に王家の血をひいた女が嫁いだ貴族の血筋なのかもしれない。」最強の魔法使いである蓮がそう言うのなら、それが真実なのだろう。智也は息を潜めて続きを待った。「とはいえ、俺が見る限りカインに流れる王家の証である青い炎はごく僅かだ。あれでは、いくらカインが努力しても王家の証である魔法使いとの契約はできないだろう。」智也は胸が重くなった。カインがいくら否定しようと、彼が現王の実子ではないというのが事実なのだ。「それが真実なら、カインに王家の証である魔法使いとの契約ができないのは当然だわ。それなのに、母親は幼いカインに魔法使いとの契約を強要した。それがどれだけカインを傷つける行為か、分かっていたはずなのに……」(可哀想なカイン……)智也は胸が痛んだ。王家の濃い血を引かない彼に、魔法使いとの契約ができるはずがない。それなのに母親に責め立てられるようにして、何人もの魔法使いを宛がわれ、契約を強要された。契約などできるはずもなく、己の無力さに打ちのめされたのだろう。そんな時に、腹違いの弟が少女『トモ』と王家の証である魔法使いの契約を果たし、カインの目の前に現れた。その『トモ』に、自分が王家の血を引いていないと指摘され、カインは恐怖のあまり剣を掴み、斬り殺してしまった。そして今もその身に『トモ』の呪いを受け、苦しみ続けている。「『トモ』を殺して呪いを受けたことは自業自得かもしれないけど……私は、カインを責める気になれない。できるなら、カインの呪いを解いて、苦しみから解放してあげたい。」智也がそう言うと、蓮はぎゅっと彼を抱きしめ、耳元で優しく囁いた。「俺はお前がどんな選択をしようとも、お前のことを命がけで守る。お前が子を産むならその子も俺が守ってやる。」蓮は少し間を置いて、続けた。「だから、『トモ』のばあさんに何を言われても怖がることはないぞ。大丈夫だからな。さあ、ギルミットの血をひく最後の末裔に会いに行こう。」蓮はそう言うと、カインから受け取った牢獄塔入りの許可証を手に、石の塔の木の門に近づいた。門番はいなかったが、塔全体に強力な封の魔法陣が刻まれているのが智

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    牢獄塔は、主に王国に反逆した政治犯が投獄されているらしい。強盗や殺人などの一般犯罪を犯した者は、別の牢獄所に収監されるのだと、蓮が教えてくれた。彼は智也の知らないことをよく知っていた。王宮の図書院に連日通い、この国の歴史や常識を勉強しているらしい。勉強嫌いの智也には、毎日図書館に通うなど考えられないことだった。想像しただけで眩暈がする。「蓮って元の世界にいた時から、知識欲が強かったよね。分からないことはとことん調べるタイプだったけど、異世界に来てからますますその傾向が強くなったみたいだね。感心するよ。私には到底できないな。」「智也は勉強しなさすぎなんだよ。異世界で生き残りたいと思ったら、まずはこの世界のことをよく知ることが肝心だろ。文字や言葉、生活習慣は魔法で他人の脳をスキャンすれば大体の知識は得られるが、人によって結構まちまちでさ。それで王宮の図書院に通い始めたんだけど、これが意外と面白い。王宮の蔵書は偏見の塊だけどな。」「偏見の塊?」智也が聞き返すと、蓮は薄く笑って続けた。「特に歴史書は最悪だな。どの国も大概そうだろ? 自国に都合の悪い歴史は捻じ曲げられる。王国の成り立ちや初代王の偉大さを讃えた本は山ほどあったが、王国に反旗を翻した人間や民族に関しては鬼畜扱いしたものばかりだった。」「そうなんだ……じゃあ、ギルミット一族のことも鬼畜扱いされていたの?」智也が聞き返すと、蓮は頷きながら牢獄塔の最上階を指差した。「ああ、ギルミット一族について書かれた書物は結構あったぞ。初代王が最大の犠牲を払って駆逐した史上最悪の一族だって書かれていた。呪いを得意とする魔法使いの集団で、その呪いは複雑な魔法陣で構成されていて、一度掛けられると容易には解けないらしい。初代王はその呪いを恐れて、大量の兵士でギルミット一族を奇襲し惨殺したんだ。逃げ出した者たちもほとんど狩り出され、酷い拷問を受けた末にこの牢獄塔の最上階から突き落とされて処刑されたらしい。」智也は両手をぎゅっと握りしめ、牢獄塔の最上階を見上げた。灰色にくすんだ石の塔が、王国に反逆して死んでいった人々の墓標のように見えた。蓮がそんな智也の肩をそっと抱きしめてくれた。「この牢獄塔が王国の首都アザンガルドに程近い場所に建てられたのは、王国に反逆心を抱くことがどんな結果を招くか、国民に見せつけるためだったら

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    つわりから回復した智也は、ドレスに着替えると蓮と共にカインの部屋へと向かった。カインは相変わらず忙しそうに、机に積み上がった書類にサインや判子を押していた。しかし智也が部屋に入ると、彼は嬉しそうに微笑んでその手を止めた。その笑顔を見た瞬間、智也の胸がきゅんと強く鳴った。 (あなたの子供を妊娠したんだよ——)思わず口にしそうになり、智也は慌てて言葉を飲み込んだ。カインは智也にソファへ座るよう勧めると、自分も仕事を中断して隣に腰を下ろした。そしてそっと智也の手を取り、優しく微笑みながら言った。「病に伏していると聞いて、心配していたんだ。顔色は良いみたいだが、大丈夫なのか、トモヤ?」「ごめんね、心配かけて。でも、ただの風邪だったみたい。もう元気になったから。あ、お見舞いのお花と果物、ありがとうね。」「そうか……風邪だったのか。実はユリアスがお前が妊娠しているかもしれないと言ったものだから、ついその気になってしまって、ベビーベッドを最高の職人に作らせていたのだが……早とちりだったようだな。風邪の具合はもう良いのか? 苦しくはないか?」「ベビーベッド……! それは……あー、えっと……あとで見せてもらってもいい? そうだ、カインの方は体調はどうなの?」智也が聞き返すと、カインは薄く笑って答えた。「相変わらずだ。背中の魔法陣が時々暴れだして苦しい時もあるが……もう慣れたし、平気だよ。」(慣れるはずがない)智也は胸の中で強く否定した。あの、拷問のように痛みと苦しみを与え、じわじわと死に至らしめる魔法陣を背負って、慣れることなどできるはずがない。平気であるはずがない。智也は真剣な表情でカインを見つめ、切り出した。「ねえ、以前に約束したよね。私が牢獄塔に幽閉されている『トモ』の祖母に会うことを許可してくれるって。正式な許可書が欲しいのだけれど……書いてくれる?」「本気で、あの老婆に会うつもりなのか? 何も話はしないと思うが。それに牢獄塔には他にも囚人が投獄されている。あまり気分のいい場所ではないよ。トモヤは行かない方が良いと思うが?」「私は、カインの呪いを解きたいの。あなたの側室となったからには、私ができることを全てやりたい。一緒に蓮についてきてもらうことになっているし、何の心配もいらないから。」「トモヤ……」不意に、カインに強く抱きしめられた。

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